台湾にいる外省人と中国国民党の、台湾人にとっての利害は何か
台湾の「外省人」って知っていますか?
外省人は1945年以降に日本人と入れ替わるように中国大陸からきた人たち。
1947年の228事件で台湾人を大量に殺しまくって、戒厳令を敷いた。
1949年には中国共産党との戦いで負けが確定的になって台湾に大勢で逃げて来た。
治安維持を理由に台湾に再度戒厳令を敷き、世界最長の白色テロで台湾人を苦しめた。
つまるところ、台湾人を苦しめてきた中国国民党が連れて来た中国人たちです。
目次
台湾の外省人ってなんなの?
国民党と外省人が台湾でしてきたこと
国民党と外省人がして来たことは、上記以外にも、
・台湾で台湾語を禁止し、台湾語を奪った。
・政治・公務員・教師の要職を独占し、台湾人を洗脳した。
当時の台湾人は中国語を喋れないので、もちろん政治の要職にはつけません。
その上、中国国民党が大陸に米とかを送りまくったので台湾の経済は破綻しました。
そして、台湾人は全員が一文無しにさせられました。→ニュー台湾ドルの誕生
政治もダメ、経済もダメなのに学者は国民党の白色テロで皆殺しに遭う始末。
それでいて本省人を文化的に劣ると見下してバカにしていたりもします。
台北では林森公園や大安森林公園のあたりに住み着き、区画整理でマンションを与えられぼろ儲けしたり。
つーか、林森公園は墓地だったのに、そこに住み着くってどういう神経してるわけ?
とにかく、これが国民党と外省人なのであります。
台湾の外省人の割合
台北のMRTに乗ると「中国語」「台湾語」「客家語」「英語」の順でアナウンスが流れます。
台湾は意外と多民族国家なので「台湾人」のために中国語・台湾語・客家語のアナウンスがあります。
台湾人は主に「閩南人」「客家人」「外省人」「原住民」で構成されています。
割合は大雑把にそれぞれ74%・12%・12%・2%。
改めて説明すると「閩南人」「客家人」「原住民」以外の「戦後、台湾にきた中(華民)国人」を「外省人」と呼びます。
このたった1割程度の外省人が台湾を偉そうに牛耳ってきたわけです。
しかも、それに逆らうと拷問して殺されるわけです。
で、外省人は戦後台湾にきた人たちなので国民党の支持者が多いです。
知らない人が多くて驚くんですが、台湾の国民党の正式名称は中国国民党です。
日本人の多くが国民党と外省人に勝手に持っているイメージって、こんなところではないでしょうか。
(と、僕が勝手にイメージを持ってます)
中国国民党と外省人の台湾での功績
しかしながら現在の台湾に貢献(?)している人もいます。
例えば独立運動、民主運動での鄭南榕。
彼は台湾(中華民国)の自由を訴え続け、最後には壮絶に自死しました。
例えば、先述の蒋介石の跡取り、蒋経国。
彼は中国からやってきた外省人1世ではありますが、台湾十大建設を成功させ、台湾の経済を伸ばしました。
晩年には「わし、中国人だけど、台湾人でもあるんだよね」と言いました。
例えば、歌手・女優の楊丞琳。
僕が個人的に好きすぎて好きすぎるんですが、彼女がいなければ今の僕もない(かも)。
台湾外省人の老兵問題
そもそも、外省人も台湾人として生きて行かなくてはならない現実があったのです。
たとえば前述の林森公園、大安森林公園は今は公園ですが、昔は外省人居住区でした。
居住区というと誤解を招くかもしれません。
中華民国の下級兵士がバラックを立てて住み着いていたという表現の方が的を射ているかも。
彼らは、国共内戦の時に国民党に「台湾へ撤退」と告げられることなく、
「台湾へ訓練しに行く」とだけ言われ台湾に連れて来られた人もいます。
もちろん、その後「帰りたくても」帰れなくなったのです。
中国に嫁子供がいた人もいたでしょう。
また、台湾が中華民国に復帰したので、台湾で商売をしようと渡って来ただけの人。
単純に国共内戦の煽りで大陸に帰ることができなくなってしまったケースもあります。
中華民国政府が外省人に「親戚に会いに大陸に行く」ことを許可したのは1987年のことでした。
40年近く台湾に軟禁されていたら、大陸の暮らしもクソもなくなっているわけです。
(ただ、大陸では蒋介石もびっくりするほどの毛沢東の失政があったわけですが)
外省人の悲哀
「外省人は国民党の手先の極悪人ばかり」
これは一側面は捉えていますが、一側面でしかない考えです。
見方によっては誤解であり、悪人でないどころか、かわいそうな人たちも存在するわけです。
当時、台湾人は中国語が喋れませんでした、
が、
逆に、
外省人だって台湾語・客家語・日本語が喋れなかった。
苦労した人も多いことでしょう。
とにかくいろんな外省人がいるわけです。
白色テロの被害に遭っている外省人だって多いです。
「あれ、最初は外省人は悪いみたいな論調じゃなかった?」って?
そうかも。
でも、それは何度も言うように、一側面だけに過ぎないのであります。
最後に「中国国民党」を支持する人たちの映像をどうぞ。
「国民党も外省人も悪いことしかしてきていない。支持してる人がいる理由がわからない。」
という風に考えている人も多いかもしれませんが、現実って複雑なんですよね。
大雑把にでも理解すると「支持してる人がいる理由」にはなるのではないでしょうか。
さらに、今はもう1949年から70年が経過しました。
外省人といっても1世、2世、3世で考え方は全く違います。
むしろ3世なんかだと「外省人」のアイデンティティがない場合も多いようです。
次の総統選挙では首投族(始めて投票する人)になる4世もでてくることでしょう。
だから、ステレオタイプで「外省人」を見ると、判断を謝る危険性が多分にあります。
特に、国民党と外省人を安易に結びつけることは、大局を見誤る原因になります。
「日本人は台湾人の政党である民進党を支持します」とか言ってる人とかいるけど、少なくともこんなこと言えないはずです。
(主語が大きいし、そもそもそんな単純な話ではない)
民進党と国民党の違いを族群に安易に求めることは台湾の政治文化を軽視しすぎ。
とっても無理解で失礼なことですよ。
まとめ
いい人もいれば、悪い人もいる。
いい事もあれば、悪い事もある。
これは日本統治時代でも同じです。
それどころか、全人類普遍の理なのかもしれません。
さて、あした1月11日は台湾の総統選挙です。
台湾のみなさんが幸せになればいいですね。
そして外国人の僕はそのおこぼれに預かれれば万々歳だと思います。
皆さんははどう感じて、どう考えるのでしょうか。
ではまた!
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台湾の外省人を理解するための参考資料
最後の最後におまけです。
日本人があまり興味を示さない「外省人」について、面白い資料をまとめました。
外省人理解にめちゃくちゃ役にたつと思いますよ。
台湾海峡一九四九
龍應台の「台湾海峡一九四九」。
ある外省人がどうやって台湾に来て、どうやって台湾で過ごしたか。
そして台湾人はそれをどう受け取ってきたか、が描かれています。
台湾でとんでもなく売れた本で、中国では発禁になったらしいです。
めちゃくちゃ面白いです。
ノンフィクション小説ということで、物語として面白く読めます。
台湾外省人の現在ー変容する国家とそのアイデンティティ
ステファンコルキュフの「台湾外省人の現在」。
僕と同じように外国人で、外省人に興味を持った人の外省人研究の本。
翻訳も素晴らしくて台湾研究の大家たちが翻訳しています。
章を挟むごとのコラムも秀逸で、新しい情報がバンバン入ってきます。
めちゃくちゃ面白いです。
論文が元ではありますが、文体は小難しくなく、興味があればどんどん読めます。
クーリンチェ少年殺人事件
エドワード・ヤンの「クーリンチェ少年殺人事件」。
映画です。
1960年台の外省人社会を描いています。
主人公の少年家族が外省人としての悩みを抱え、社会に理不尽を感じています。
何を隠そう、この家族は日本家屋に住んでいます。(主人公は押入れで寝てる。ドラえもんか)
戦勝国民が敗戦国が撤退して残された家に住まわせられているんです。
元敵国の家に、大陸を追い出され住んでるって、屈辱的じゃないですか?
とにかく、4時間弱という恐ろしい長さの映画ですが、ザッと見るにはいいかもしれません。
個人的にはあまり面白いと感じませんでしたが、当時の雰囲気を簡単に感じることができます。
主人公少年家族が上海語を喋るのも興味深いです。
陳才根的鄰居們
「陳才根的鄰居們」
今はなき林森公園の外省人居住区に住み着いた老いた外省人たちを追ったドキュメンタリー。
もう、めちゃくちゃ面白いです。
おそらく日本では手に入らない上に日本語対応していないのでハードル高めです。
しかし、マジで、めちゃくちゃ面白いです。
台湾在住で今回の内容が面白いなと思った方はぜひ観てみてください。
(僕の友達だったら貸すこともできます)